Video Article

日本のIT業界は斜陽産業です

「IT業界は将来性がありそうだから」という理由だけで就職先を選ぼうとしている就活生に向けて、Utsuさんは業界研究のもう一段深い視点を提示する。世界的なIT業界の構造変化を踏まえた上で、それでもIT業界を目指すべきか、あるいは別の選択肢を考えるべきかを整理した内容だ。

世界的な勝者総取りとハード・ソフトの敗北

Utsuさんは、IT業界では世界的な勝者総取りの構造が進んでいると指摘する。言語や文化の壁が取り払われ、世界中が同じプラットフォームを使う時代になった結果、世界で勝てなければ国内でも勝てない状況が生まれていると語る。かつて世界一だった日本のパソコンメーカーはハードウェアで敗れ、ソフトウェアでも世界一になった時代はほぼなかったと振り返る。ITサービスは天才による設計と膨大な開発工数によって成り立つビジネスであり、最終的には投じた開発費用の大きさで優劣が決まるため、大きい会社が勝つ構造だとUtsuさんは説明する。日本企業の投資規模はよくて1,000億円程度が限界であり、兆円単位の投資を行う海外の巨大IT企業に太刀打ちできないというのがその根拠だ。

日本はすでにIT技術の「利用者」

Google・Apple・Facebook・Amazonといったサービスはほぼ全ての人が日常的に利用しており、これらの企業は巨大なユーザー数と巨額の手元資金を背景に、世界中を実験場としながらサービスを展開できる強みを持つとUtsuさんは述べる。一方で日本発のSuicaのような優れたサービスも、法律や世論の壁によって大きく育つ機会を逃したと指摘し、環境が違えば日本企業が巨大IT企業の一角になっていた可能性にも触れる。ニッチな領域で世界に通用する国産サービスの存在は認めつつも、それはごく一部の話であり、主流分野では海外勢が優位に立っているというのがUtsuさんの見立てだ。

法人向けIT業界の現状と先行き

法人向けIT業界について、Utsuさんは分野ごとに温度差があると説明する。公共系は予算の大幅増が見込みにくく緩やかな縮小が予想される一方、安定性は高いが成果物が地味で「カッコいいIT」を求める人には向かないとする。金融系はこれまで大規模システム移行のプロジェクトが相次いだが、それらは終盤に差し掛かっており、今後は統合やシャットダウンに伴う限定的な需要にとどまると見る。大手が生き残る一方、受注が細れば下請けが真っ先に切られる構造にあるとも指摘する。民間・産業分野ではクラウド化が進み「作る」から「利用する」時代へ移行しつつあり、AI分野についても、細かなチューニング業務は技術の進歩で不要になり、最終的にはビジネスに直結する結果そのものを売る形に変わっていくとUtsuさんは予測する。

実業を目指した上でITを使いこなす

Utsuさんが強調するのは、規模がすべてを決めるという原理だ。巨大IT企業があらゆる分野を独占していく流れの中で、ITサービス企業そのものの需要は確実に細っていくと見る。だからこそ、既存の実業企業がITを基盤として自社ビジネスを展開していくべきであり、IT業界での経験を実業に持ち込める人材こそ求められると語る。ITは英語と同様、あくまでビジネスを成立させるためのツールであり、ITの知見とビジネスの知見を組み合わせて実業側に関わることに価値があるという立場だ。IT従事者そのものを否定しているわけではなく、巨大ITと共生しながら実業の中でデジタルを活用できる人材が重要になると締めくくっている。

要点

  • ITサービスは開発費用の規模で優劣が決まるビジネスであり、兆円単位の投資が可能な海外巨大IT企業に日本企業が規模で対抗するのは難しい構造にある
  • 法人向けIT業界は公共・金融系で縮小傾向、下請けは受注減少で切られやすく、民間分野もクラウド化で「作る」需要が細っていく
  • ITはあくまでビジネスを成立させるためのツールであり、実業を目指した上でIT知見を活用できる人材が今後求められる

IT業界そのものへの就職を目指すよりも、実業の中でITを使いこなす人材を目指すべきだというのが、Utsuさんが一貫して伝えるメッセージである。